2019年05月01日
短歌 に関する記事
2019年04月30日
短歌 に関する記事
わが恋は み山に生ふる はたつもり
積もりにけらし 逢ふよしもなし
よみ人しらず
■ 訳
私の恋は(まるで)深い山に生える令法(リョウブ:畑つ守)だよ。
(雪が)積もってしまって(あなたに)逢う方法もない。
2019年04月29日
短歌 に関する記事
2019年04月28日
長歌 に関する記事
春の日の 霞める時に 住吉の 岸に出で居て
釣舟の とをらふ見れば いにしへの ことぞ思ほゆる
水江の 浦島の子が 鰹釣り 鯛釣りほこり
七日まで 家にも来ずて 海境を 過ぎて漕ぎ行くに
海神の 神の娘子に たまさかに い漕ぎ向ひ
相とぶらひ 言成りしかば かき結び 常世に至り
海神の 神の宮の 内のへの 妙なる殿に
たづさはり ふたり入り居て 老いもせず 死にもせずして
長き世に ありけるものを 世間の 愚か人の
我妹子に 告りて語らく しましくは 家に帰りて
父母に 事も告らひ 明日のごと 我れは来なむと
言ひければ 妹が言へらく 常世辺に また帰り来て
今のごと 逢はむとならば この櫛笥 開くなゆめと
そこらくに 堅めし言を 住吉に 帰り来りて
家見れど 家も見かねて 里見れど 里も見かねて
あやしみと そこに思はく 家ゆ出でて 三年の間に
垣もなく 家失せめやと この箱を 開きて見てば
もとのごと 家はあらむと 玉櫛笥 少し開くに
白雲の 箱より出でて 常世辺に たなびきぬれば
立ち走り 叫び袖振り こいまろび 足ずりしつつ
たちまちに 心消失せぬ
若くありし 肌も皺みぬ 黒くありし 髪も白けぬ
ゆなゆなは 息さへ絶えて 後つひに 命死にける
水江の 浦島の子が 家ところ見ゆ
高橋虫麻呂
■ 訳
(暖かな)春の日の霞掛かった時、住之江の岸に出て(沖に出ている)釣り船がゆらゆらと揺れ動いている様子を見ると、昔のことを思い出します。
(昔、)カツオやタイを釣る(上手さを)自慢にしている水江の浦の嶋子がいました。
七日間も家にも帰らず海を渡って海の果てまで漕ぎ出すと、海の神様の娘に偶然出会いました。
互いに語り合い、話が合って(恋は)成就し、(二人は)結ばれて常世の国に行き着きます。
海の神様の宮殿の内にある立派な邸宅に連れ立って二人は暮していましたが、老いも死にもせず生きられたのに、俗世の愚かな人間である水江の浦の嶋子は妻に、
「少しの間、実家に帰って両親に(結婚して立派な屋敷で暮らしていることを)相談してくるよ。明日には帰ってくるよ。」
というと、妻は
「常世の国にまた戻り、今のように(私と)逢いたいと思われるのでしたら、この櫛箱を決して開けないでください。」
と伝えますが、あれほどしっかり約束したのに…。
住之江に帰った水江の浦の嶋子は家を探しても、家は見つからず、里を探しても、里は見つかりません。
奇妙なことだ、と思案します。
「家から出てわずか三年の間に垣根も家もなくなるなんて。もしかしてこの櫛箱を開いてみれば、元のように家が現れるのでは。」
と、(妻に手渡された)美しい櫛箱を少し開いてみると、箱からは白い煙が出てきて、常世の国の方まで棚引いていきます。
(慌てて)走り回り、叫び、袖を振り(煙を追いやろうとし)、転げまわり、地団太を踏んでいましたが、あっという間に(煙に巻かれて)気絶してしまいます。
(すると、)若かった肌はしわだらけに、黒かった髪は真っ白に、しまいには息も絶え絶えとなり、その後死んでしまいました。
昔、水江の浦の嶋子の家のあった場所が見えます。