春さらば(よみ人しらず)

短歌 に関する記事

春さらば かざしにせむと 我が思ひし
桜の花は 散りにけるかも よみ人しらず

■ 訳

春が来たら、愛しいあの人への髪飾りにしようと思っていた桜の花は、あの人と共に散ってしまった。

■ 解説

「さらば」は然らばとなり、そうしたら、という意味に、「かざし」は挿頭で髪飾りのことをそれぞれ意味します。
桜は一斉に咲き一斉に散ることから、この句では恋人の自死という形で大切なものを失ってしまった悲しみを伝えています。

■ この詩が詠まれた背景

万葉集第十六巻(3786首目)に記載されている短歌です。
なお、冒頭にこんな物語が記されております。

昔々あるところに、桜児(さくらご)という女性がおりました。
あるとき、桜児との結婚をかけて、二人の男性が争いを始めてしまいました。
二人の男性は命を懸けて争いあい、桜児の言うことを聞きません。

その様子を見た桜児は、『古来より二人の男性に嫁ぐ女性はおりません。しかし、お二人は争いを止めようとしない。争いを止めていただくためには私が死ぬより他ありません。』と言って、林の中で首を吊って死んでしまいました。
それを見た残された男性二人は血の涙を流し、うち一人が詠んだ歌がこの句であると伝えられており、また、もう一人の句も万葉集に残されています。

■ 豆知識

この桜児をテーマとした句を桜児伝説と称し、争った二人の句以外にも桜児を詠った句がいくつか残されています。

万葉集第十六巻にはかの竹取物語のおじいさんである、竹取の翁の詠んだ句が残されています。

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