あしびきの(柿本人丸)

短歌 に関する記事

あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の
ながながし夜を ひとりかもねむ 柿本人丸

■ 訳

山鳥がその長い尾を垂れ下げて寂しく眠るように、(私も)この嫌になるくらい長い秋の夜を独り寂しく過ごさねばならないのか。

■ 解説

「あしびき」は山と組み合わせて使われる枕詞(ここでは山鳥)で、足引きと書くことから、足を引かなければならないほど険しい山といった意味に、「しだり尾」は長く垂れ下がった尾、「ながながし」は嫌になるくらい長い、「ひとりかもねむ」は独り孤独に過ごす様子をそれぞれ意味しています。
この歌は恋の歌に分類されるもので、一人切なく過ごす秋の夜長を歌ったものです。
なお、「あしびき」と読んでいますが、本来の読み方は「あしひき」です。

■ この詩が詠まれた背景

この歌は拾遺和歌集十三巻 恋三、小倉百人一首の第三首目に記載されている歌です。

ヤマドリはキジ科の鳥でとても長い尾を持っています。 雌雄が峰を隔てて別々に眠るという言い伝えから、一人で寝ることを喩えています。

■ 豆知識

柿本人麻呂は山部赤人と共に歌聖と呼ばれ、三十六歌仙の一人に上げられる大変有名な歌人です。
柿本人麻呂作と言われる和歌には約140種類の枕詞が残されていますが、その殆どを人麻呂が作成したと言われています。
有名であるが故か本人ではないと思われる歌も多く見つかっており、人麻呂名義の作品の中において真作は一部ではないかともいわれています。

なお原典は、万葉集第十一巻(2802首目:或ル本ノ歌ニ曰ク)に収録されている『あしひきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む』になります。
(誰が歌ったものか明記されていません。)

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