■ 解説
「奥山」は山奥のことを意味します。
「ぞ」には「とても」といったような強調の意味が含まれているので、鹿の声を聞く秋は(他の季節よりも)とても悲しい、といった意味になります。
■ この詩が詠まれた背景
この歌は古今和歌集(第四巻 215首目)、小倉百人一首の第五首目に記載されている歌です。古今和歌集には「よみ人しらず」として選句されています。
鹿は「フィー」とか、「ピィー」といった高めの声で鳴きます。悲鳴のようにも聞こえますが、繁殖期のオスが自らの縄張りを主張する際に出す鳴き声です。
■ 豆知識
花札でおなじみの紅葉と鹿の組み合わせはこの歌が発端です。
猿丸大夫は三十六歌仙の一人に上げられる有名な歌人ですが、猿丸大夫が誰なのか、本当に実在していたのか、今現在でも殆ど何もわかっていない伝説の歌人です。
『猿丸大夫集』という私選集が作られていますが、本人の作がどれだけ含まれているか分かっていません。
猿丸は名で大夫は官職を示しています。小野猿丸と言う名前だったと言う伝承が残っていますが、詳細は不明です。
万葉仮名で書いたこの詩の中に「カキノモト」と読める文字が含まれていることなどの理由から、柿本人麻呂と同一人物でないか、と言った説まであります。
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