花の色は(小野小町)

短歌 に関する記事

花の色は 移りにけりな いたづらに
我が身世にふる ながめせしまに 小野小町

■ 訳

春雨で花(桜)は散って、すっかり葉桜になってしまったわ。
この世の儚さを考えて物思いに耽っている間に、私もすっかり老け込んだのかしら。

■ 解説

「花の色は」は桜の花を、「移り」は色あせる、あるいは散る、「けりな」は〜だったのか(感嘆:はじめて気付いた様子)、「いたづらに」は虚しく、あるいは儚く、「ふる」は(雨が)降ると(年を)経るを掛けた言葉、「ながめせしまに」は長雨(ながめ)が降っている間に、と、物思いに耽っている間を掛けた言葉、といった意味になります。
外を眺めていた際、ふと目に映った桜が春の長雨で散った様子を見て、自分の心情と照らし合わせたのでしょうか。

■ この詩が詠まれた背景

この歌は古今和歌集第二巻(春歌下巻 113首目)、小倉百人一首の第九首目に記載されている歌です。

「花」についてですが、桜の花見は平安時代初期には既に行われていたことが記録に残されています。
また、花=桜となったのも平安時代からといわれています。(主に奈良時代の詩の載った万葉集では花と言えば中国から贈られた梅でした。)

■ 豆知識

小野小町は六歌仙、三十六歌仙の一人です。
絶世の美女として知られ、国内では三大美女の一人に数えられる女性で、遣隋使小野妹子の子孫、平安時代きっての天才小野篁の孫であるとも言われていますが、殆ど何も分かっておらず、架空の人物ではないかとも言われています
和歌集には、小野小町の親族と思われる人物の詩が掲載されており、「小町姉(こまちがあね)」(古今和歌集790首目)、「小町孫(こまちがまご)」(後撰和歌集第十八巻 雜歌四)、その他写本に「小町がいとこ」、「小町姪(こまちがめい)」といった名が残されています。
小町という名は、姉「小野町」の妹という意味だという説もあります。

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