あまつ風(僧正遍昭)

短歌 に関する記事

あまつ風 雲のかよひじ 吹きとぢよ
乙女の姿 しばしとどめむ 僧正遍昭

■ 訳

天を吹く風よ、(天につながる)雲の合間の通り道を雲をかき集めて閉ざしてくれ。
(この地で)舞い踊る天女(の姿)をしばらくこの場にとどめたいんだ。

■ 解説

「あまつ風」は天を吹く風、「雲のかよひじ」は雲の通り道(天女がそこを通って降りてくるという伝説がありました)、「吹きとぢよ」は(風が)吹いて閉じてしまえ、「乙女」は天女、「しばしとどめむ」はもうしばらくここにとどめよう、といった意味になります。
実際の天女を見たわけではなく、古今和歌集に「五節のまひひめを見てよめる」とあることから、五節舞を詠んだ歌です。

■ この詩が詠まれた背景

この歌は古今和歌集十七巻(雑歌上 872首目)、小倉百人一首の第十二首目に記載されている歌です。

五節舞とは歌にあわせて、4〜5人の舞姫(巫女)が五度、袖を振って舞うという、呪術的な舞楽のことです。
この姿があまりに美しく艶やかに映ったので、もっと見続けたい思いでこの歌を詠んだのでしょう。

■ 豆知識

遍昭(俗名は良岑宗貞)は六歌仙、三十六歌仙の一人で、桓武天皇の孫にあたる人物です。
上記の歌から分かるように、色好みの逸話が数多く残されています。
たとえば、旅の途中小野小町に、
「石の上で寝るのは寒すぎるので、一枚服を貸して欲しい」
といわれるのですが、
「世を背く苔の衣はただ一重貸さねば疎しいざ二人寝ん」
(意味:出家した私には一枚の法衣しかありません。(こんな寒い日に貴女に)貸してしまうと私は裸で過ごさなければならないので辛すぎます。なので、二人で寝ましょうか。)
と歌った歌が後撰和歌集(1196首目)に残されています。
実際のところ、元々小野小町とは親しかったそうなので、洒落のつもりで歌を詠んだのでしょう。

女好きのイメージが強い人物ですが、出家した後は天台宗の僧となり、僧正の位まで頂いており、今昔物語集などさまざまな物語にも登場しています。

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