■ 解説
「ちはやぶる」は神にかかる枕詞で、いちはやぶる(激しく、素早く、ふるまう)を縮めた表現、「神代(かみよ)にもきかず」は古事記などに載っている神様がいたといわれる頃にも聞いたことが無い、「龍田川」は現在の奈良県斑鳩町に流れている竜田川(歌枕)、「からくれないに」は唐紅色(深紅色:■)と唐や韓(新羅や渤海国)といった外国から渡ってきた素晴らしい品を掛けたもの、「水くぐるとは」は水が染められるなんて、を意味します。
■ この詩が詠まれた背景
この歌は古今和歌集五巻(秋歌下 294首目)、小倉百人一首の第十七首目に記載されている歌です。
古今和歌集に「二条の后の春宮のみやす所と申しける時に、御屏風にたつた河にもみぢながれたるかたをかけりけるを題にてよめる」(二条の后(藤原高子)が皇太子(陽成天皇)の宮女であった頃に、竜田川に紅葉が流れる様子が描かれた絵を題にして詠んだ。)とあるため、実際の景色を見て詠んだ句ではありません。
素性法師も同じ題を元に詠んでおり、その詩が古今和歌集に残されています。
■ 豆知識
この歌を読んだ在原業平は、六歌仙、三十六歌仙で且つ何よりイケメンで有名です。
在原業平のことを三代実録には、「業平、体貌閑麗、放縦不拘。略無才学、善作倭歌。」、つまり「姿形は雅で麗しく、自由奔放。学問には疎かったが、作る和歌は素晴らしい」とあります。
なお、後に書かれた源氏物語などに多大な影響を与えたといわれる伊勢物語の主人公は在原業平その人といわれています。
ちなみに、この歌を題材にした落語(千早振る)が存在します。
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