住の江の(藤原敏行朝臣)

短歌 に関する記事

住の江の 岸による波 よるさへや
夢のかよひち 人めよくらむ 藤原敏行朝臣

■ 訳

(現在の大阪市)住之江の岸に寄せる波は夜でさえ寄ってくるというのに、あなたは来てくれない。
夢の中でさえ人目を避けているのかなぁ。

■ 解説

「住の江の 岸」はまだ埋め立てられる前の大阪市住之江区の辺りに存在した岸を、「よる波」は寄せてくる波、「よるさへや」は夜でさえ、「夢のかよひち」は夢の通い道(当時、夢に愛しい相手が出てくることは、夢に出てくる相手が自分のことを好いてくれている、といった解釈がされていました)、「人め」は人の目、「よく」は避ける、「らむ」〜しているのか、という意味になります。
夢に現れてくれさえすれば、自分のことを想ってくれている=脈アリと考えることができたわけで、とりあえず夢に出てきてくれーという祈りを詠んだ歌と言えます。

■ この詩が詠まれた背景

この歌は古今和歌集十二巻(恋歌二 558首目)、小倉百人一首の第十七首目に記載されている歌です。

古今和歌集に「寛平御時きさいの宮の哥合のうた」(寛平御時后宮歌合の際に詠んだ。)とあるため、班子女王(宇多天皇の母后)主催の歌合にて詠まれた詩です。

■ 豆知識

藤原敏行は三十六歌仙の一人で、書家としても空海と共に挙げられるほど有名な人ですが、27歳という若さで早世しています。
残念ながら現存する書跡は、署名のある神護寺鐘銘(三絶の鐘)のみとなっています。

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