■ 解説
「吹くからに」は吹いてきて、「しほるれば」は萎れてしまう、「むべ」はなるほど、「いふらむ」はいうのか、をそれぞれ意味します。
秋の情景と言葉遊びを巧みに使った歌です。
■ この詩が詠まれた背景
この歌は古今和歌集 第五巻(秋歌下 249首目)、小倉百人一首の第二十二首目に収録されています。
古今和歌集の題名に「これさだのみこの家の哥合のうた」と書かれていることから、寛平5年(893年)の秋に開催された是貞親王家歌合に詠んだものになります。
当時の秋は、陰暦で七月から九月を指していました。
現在の暦ですと八月から十月に相当し、ちょうど台風が到来する時期となります。
山+風で嵐は分かるのですが、当時山から吹く風が嵐というのは現代人の感覚からすれば、ちょっと無理やりな感じがします。(むしろ冬に吹く山おろしです)。
秋とありますが、実際には冬の到来を告げる山おろしを詠んだものだったのでしょうか。
それとも嵐と颪の区別をつけていなかったのでしょうか。
ちなみに、平安時代の気候は温暖だったそうで、台風の数も今より多かったと考えられます。
■ 豆知識
文屋康秀(ふんやのやすひで)は六歌仙、中古三十六歌仙の一人です。
この歌は息子である文屋朝康の歌である可能性があります。
仁和元年(885年)には亡くなったとされており、古今和歌集に記載されている「是貞親王家歌合」(893年)に参加しているとなると矛盾が発生するためです。
小野小町と親密であったといわれており、康秀が三河国に赴任する際に誘った際に小町が詠んだとされる詩が古今和歌集(十八巻 雑歌下 938首目)に残されています。
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