有明の(壬生忠岑)

短歌 に関する記事

有明の つれなく見えし 別れより
暁ばかり うきものはなし 壬生忠岑

■ 訳

貴女に冷たくあしらわれたあの日の帰り道、夜明けの頃にツンとそっぽ向いた素っ気ない(下弦の)月を見るたび、夜明けほど辛くて心苦しいものは無いよ。

■ 解説

「有明」とは夜明けに空に残る月(下弦の月)のこと、暁(あかつき)とは夜明け前のまだ暗い時間帯のこと、「つれなく」とは冷淡なとか薄情といった意味です。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は古今和歌集 第十三巻(恋歌三 625首目)、小倉百人一首の第三十首目に収録されています。

彼女を訪ねては見たものの、「早く帰ったら?(いつまでも居座られると邪魔なんだけど。)」といった具合に冷たくあしらわれ、寂しく帰るその道で、ふと空を眺めると(朝が近づき消えかけた)夜明け前の下弦の月まで、まるでそっぽ向いたように私を冷たくあしらうかのように見え、その時のことがトラウマとなり、夜が明けるたびに思い出してしまう、といった様子を詠んだもののように感じられます。

■ 豆知識

作者である壬生忠岑(みぶのただみね)は三十六歌仙の一人で古今和歌集の撰者です。
地位こそ低かったものの歌人としては一流で、皇族を差し置いて勅撰和歌集である拾遺和歌集の巻頭に載せられているほどです。
小倉百人一首を選歌した藤原定家はこの詩を最も優れた和歌であるとして後鳥羽上皇に勧めたという話が残されています。

息子である壬生忠見(みぶのただみ)も三十六歌仙の一人で、百人一首41首目に登録されています。

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