朝ぼらけ(坂上是則)

短歌 に関する記事

朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに
吉野の里に 降れる白雪 坂上是則

■ 訳

夜が白んでそろそろ朝かという時にふと外を見ると、まるで月が昇っているかのような明るさで、吉野の里は辺り一面の雪景色だったよ。

■ 解説

「朝ぼらけ」は夜が明けかけて白んでいる様子のこと、「有明の月」は朝方まで空にある月、「吉野の里」は今の奈良県吉野郡一帯のこと(歌枕)を指します。
ちなみに、朝ぼらけは曙(あけぼの)よりも朝に近い表現です。

■ この詩が詠まれた背景

この詩はは古今和歌集 第六巻(冬歌 332首目)、小倉百人一首の第三十一首目に収録されています。
古今和歌集の題名には「やまとのくににまかれりける時に、ゆきのふりけるを見てよめる」(大和国(現在の奈良県)に出かけた際に雪が降った様子を見て詠んだ)と書かれています。

なお、この詩は李白の静夜思の一節を元にした詩で、「牀前看月光 疑是地上霜 挙頭望山月 低頭思故郷」(牀前月光を看る疑ふらくは是れ地上の霜かと頭を挙げて山月を望み頭を低れて故郷を思ふ)が原文です。
訳すと「寝床に差す月の光をみて、地上にできた霜かと疑った。頭をあげ、山に出た月を眺めた後、頭を下げると故郷のことを思っている。」となります。

■ 豆知識

作者である坂上是則(さかのうえのこれのり)は三十六歌仙の一人です。
蹴鞠がとても上手かったそうで、醍醐天皇の御前で蹴鞠を一度も落とさなかったことから褒美が与えられています。

ご先祖様は征夷大将軍として有名な坂上田村麻呂です。
息子である坂上望城(さかのうえのもちき)は是則同様、三十六歌仙の一人で、万葉集の訓読、後撰和歌集の撰集を行っています。

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