八重葎(恵慶法師)

短歌 に関する記事

八重葎 しげれる宿の 寂しきに
人こそ見えね 秋は来にけり 恵慶法師

■ 訳

幾重にも(カナ)ムグラが生え茂ったさびれた宿に、訪問者は誰もやってこないのだけれど、秋はやって来たね。

■ 解説

「八重」は何重(幾重)にも、「葎(ムグラ)」はいわゆるヤエムグラではなく、秋に自生するアサ科のカナムグラを、「しげれる宿」は被い茂った宿から、転じて寂れた宿、「人こそ見えぬ」は訪れる人は居ないが、といった意味になります。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は拾遺和歌集 第三巻(秋 140首目)、小倉百人一首の第四十七首目に収録されています。
拾遺和歌集の題に「河原院にて荒れたる宿に秋來るといふこゝろを人々よみ侍りけるに」(河原院で荒れた宿に秋がやってくるその心をみんなに詠んだ)とあります。
ちなみにムグラは元々植物が繁茂した様子を指す言葉で、「しげれる」と「寂しき」は対句表現になります。

■ 豆知識

作者は恵慶法師(えぎょうほうし)で、中古三十六歌仙の一人です。

この詩を詠んだとされる河原院は源氏物語の登場人物、光源氏の邸宅「六条院」のモデルの一つにもなっていましたが、この時代にはすでに廃れており、その跡地に寺が建てられていました。
今は無きその場を想像しつつ詠んだ詩とすれば一層の虚しさも伝わってきます。

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