滝の音は(大納言公任)

短歌 に関する記事

滝の音は 絶えて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞こえけれ 大納言公任

■ 訳

(滝が無くなり)滝の音が聞こえなくなって久しいのだけれど、その名声は今も人々の噂となって流れているよ。

■ 解説

「滝」は嵯峨上皇が嵯峨院(嵯峨上皇の別荘です)の池の傍に作らせた滝のことを、「絶えて久しく」は、無くなって結構経つ、「名こそ」は評判や名声、「流れて」は人々の話題に昇って、「なほ聞こえけれ」はそれでも聞こえてくるのだ、といった意味になります。
ところで「名こそ」の部分は千載和歌集では「各社」と書かれており、これは今の言葉にすると「来るな」の意味になります。(勿来関を訓当てで各社関)
これまで立ち入りが禁止されていた場所に人が行き交うようになったことで、滝ではなく人が流れる様子を詠んだのかもしれません。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は千載和歌集 第十六巻(雜歌上 1035首目)、小倉百人一首の第五十五首目に収録されています。
題に「さがの大覺寺にまかりてこれかれ歌よみ侍りけるによみ侍りける」(嵯峨の大覚寺に行き、あれやらこれやら歌を作られたものを詠まれた)と書かれています。

この詩に登場した滝があったといわれる大覚寺は、現在も残っています。

■ 豆知識

作者は藤原公任(ふじわらのきんとう)で、三十六歌仙という名人を選びだした人物です。
従兄弟である具平親王と共に三十六人撰という秀歌集を作りましたが、それが元となっています。
三十六歌仙を元に、「中古三十六歌仙」、「女房三十六歌仙」が登場しました。
なお、選ばれた三十六歌仙は以下となります。
柿本人麻呂、山部赤人、大伴家持、猿丸大夫、僧正遍昭、在原業平
小野小町、藤原兼輔、紀貫之、凡河内躬恒、紀友則、壬生忠岑
伊勢、藤原興風、藤原敏行、源公忠、源宗于、素性法師
大中臣頼基、坂上是則、源重之、藤原朝忠、藤原敦忠、藤原元真
源信明、斎宮女御、藤原清正、藤原高光、小大君、中務
藤原仲文、清原元輔、大中臣能宣、源順、壬生忠見、平兼盛

「和歌」「漢詩」「管弦」にすばらしい才能を発揮し、大鏡に三舟の才というエピソードが残っています。
「大納言公任集」、「金玉和歌集」、「新撰髄脳」、「和歌九品」など、さまざまな書物を残しています。

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