■ 解説
「心にも あらで」は心にもなく、不本意にも、「うき世に」は現世、「ながらへば」は生き永らえてしまったなら、「恋しかるべき」は恋しいと思うだろう、「夜半の月」は夜中の月、といった意味になります。
■ この詩が詠まれた背景
この詩は後拾遺和歌集 第十五巻(雜一 860首目)、小倉百人一首の第六十八首目に収録されています。
題に「例ならずおはしまして位などさらむと覺しめしける頃月のあゝかりけるを御覽じて」((目の)ご病気で退位を決断された際に明るい月をごらんになって)とあります。
なぜ不本意なのかですが、これには藤原道長の暗躍があります。
詳細については後述します。
■ 豆知識
作者は三条天皇(さんじょうてんのう)です。
容姿が母方の祖父である藤原兼家によく似ていたとのことで、兼家に溺愛されていました。
仙丹(不老長寿の妙薬といわれていたが実際には水銀でできた猛毒)を飲んだ直後に目を患ったとされており、また、退位後失明したことが記録されています。
なお、親政を行いたい三条天皇と外孫を天皇に据えたいと思っていた藤原道長との間には確執があり、道長は内裏の火災(徳が無いため発生したとされた)や眼病を理由にしきりに譲位を迫ったようです。
仙丹の入手経路や内裏の火事がなぜ発生したのかは不明ですが、もしかしたら何らかの裏工作が仕込まれていたのかもしれません。
父である一条天皇は道長に警戒心を抱いており、「王が正しい政を欲するのに、讒臣一族が国を乱してしまう」という手紙を残していましたが、道長に見つかり破り捨てられたという話が残されています。
(この話は後年記述されたものであり、信ぴょう性があるかどうかは不明です。)
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