思ひわび(道因法師)

短歌 に関する記事

思ひわび さても命は ある物を
うきにたへぬは 涙なりけり 道因法師

■ 訳

(貴女の事を)想い、(そのつれない態度に)嘆き悲しんでいるのに、その辛さに耐えられないのは涙だけで、(私は今も)生きながらえているよ。

■ 解説

「思ひわび」は(つれない相手を)思い嘆き悲しみ、「さても命は ある物を」はそれでも命はあるのに、「うきに」は辛いことに、「たへぬは」は耐えられないのは、「涙なりけり」は涙だけだ、といった意味になります。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は千載和歌集 第十三巻(恋歌三 817首目)、小倉百人一首の第八十二首目に収録されています。
「題志らず」とあるため詳細は不明ですが、道因はとても長生きしたことで知られており、かつての恋人のことを思い出して詠んだのかもしれません。

■ 豆知識

作者は藤原敦頼(ふじわらのあつより)で、承安2年(1172年)に出家して道因と称しました。
出家した時の年齢は82歳で、92歳に亡くなるまで歌人として精力的に活動しました。

若い頃は負けん気が強くて執念深く、また何よりケチで有名でした。
たとえば、任期終了後、装束は下役の馬飼いに与えることが慣習であったにもかかわらずその褒美をケチったため、斎宮行列の最中に服を剥ぎ取られ裸で逃げ帰ったという話や、永縁僧正が琵琶法師たちに、「自分の詩を流行らせてくれ!御礼はするから」とお願いしたことでブームになったのを羨んだ敦頼は、同じように琵琶法師に歌を流行らせてもらおうとしたのですが、お礼一つ用意しなかった、という話などが伝わっています。

歌道には大変熱心で80歳を過ぎても住吉大社に歌が上手く詠めるようにと、毎月お祈りを欠かさなかったそうです。

死後、千載和歌集に道因の歌が18首取り上げられたことで、撰者である藤原俊成の枕元に立ち、涙を流して感謝されたことから、俊成はさらに2首加え20首収録した、という話も伝わっています。

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