世の中よ(皇太后宮大夫俊成)

短歌 に関する記事

世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る
山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる 皇太后宮大夫俊成

■ 訳

この世ってのは、嫌な事から逃れられる方法なんてないもんだなぁ。
山奥に(逃げ)入った先にいた鹿もそりゃ(世の無常さに)鳴いちゃうってもんだよ。

■ 解説

「世の中よ」はこの世というものは、「道こそなけれ」は(世の中の憂いから逃れる)道なんて、「思ひ入る」は思い詰めることと、山に入ることを掛けた言葉、「山の奥にも」は山奥であることと、俗世ではない場所を、「鹿ぞ鳴くなる」は鹿が鳴いている、といった意味になります。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は千載和歌集 第十七巻(雜歌中 1148首目)、小倉百人一首の第八十三首目に収録されています。
「述懷百首の歌よみ侍りける時鹿の歌とてよめる」(述懐百首の歌合の時に「鹿の歌」という題目で詠んだ。)とあります。

■ 豆知識

作者は藤原俊成(ふじわらのとしなり)で、後白河院の命によりたった一人で千載和歌集を編集しました。

小倉百人一首を撰んだ藤原定家(ふじわらのさだいえ)は俊成の息子です。

平家物語に記述がありますが、治承・寿永の乱(源平の戦い)において、平氏一門が都落ちする際に、平忠度が俊成の門を訪ね、勅撰和歌集に一首入れて欲しいという願いを聞き届け、詠み人知らずで収録した話が残っています。
この詩については後日説明します。

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