■ 解説
「ながらへば」は生きながらえたなら、「またこのごろや」はまた今頃のことが、「しのばれむ」は懐かしく思い出すのだろうか、「うしと」は辛いと、あるいは苦しいと、「見し」は経験、あるいは思い出、「世ぞ」はその頃、「いまは」は今では、「恋しき」は懐かしいと思う(故郷が恋しい)、といった意味になります。
■ この詩が詠まれた背景
この詩は新古今和歌集 第十八巻(雑歌下 1843首目)、小倉百人一首の第八十四首目に収録されています。
なお、題は残されていません。
■ 豆知識
作者は藤原清輔(ふじわらのきよすけ)で、父は詞花和歌集の撰者である藤原顕輔です。
父である顕輔とは度々意見が衝突していたため、親子仲はあまり良くなかったようですが、多数の歌合の判者を勤めたこともあってか父に認められ、六条藤家三代目を継ぎました。
父と同様、清輔も二条天皇の命により勅撰和歌集、続詞花和歌集の撰者となり編纂していましたが、補訂中に二条天皇が崩御されたため私撰集として完成させています。
当初、父である顕輔が詞花和歌集の撰者を承った際、補助として作業に当たりましたが、顕輔の意見と対立し父に疎まれるようになります。
詞花和歌集は勅撰集の慣例を破って羈旅・哀傷・神祇歌を省いて収録数も減らすことで選歌のレベルを上げたことで質の高い歌を揃えましたが、それに対し続詞花和歌集は従来の勅撰和歌集の形式を守っており、こういった違いから考え方の違いを伺えるかもしれません。
(ちなみに、詞花和歌集に清輔の歌は一首も載せられていません。)
続詞花和歌集に載せられた和歌は後に、千載和歌集、新古今和歌集といった勅撰和歌集に収録されています。
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