箱根馬子唄(よみ人しらず)

甚句 に関する記事

箱根八里は 馬でも越すが
越すに越されぬ 大井川

箱根御番所に 矢倉沢なけりゃ
連れて逃げましょ お江戸まで

三島照る照る 小田原曇る
間の関所は 雨が降る

松になりたや 箱根の松に
諸国大名の 日除け松に

雲か山かと 眺めた峰も
今じゃわしらの 眠り床

箱根番所と 新井がなけりゃ
連れて行きましょ 上方へ

尾上高砂 千歳の松は
千代も変わらぬ 深緑 よみ人しらず

■ 訳

箱根の道は馬でも越せるけれど、大井川は橋も無く水かさが増すと渡ろうにも渡れない。
箱根の関所と矢倉沢の関所が無ければ、江戸まで(女性を)連れて逃げるところさ。
三島宿は晴れるが、小田原宿は曇っていて、その間にある(箱根の)関所じゃ雨降ってる。
松になりたいよ、箱根の松に。大名の日除け松になって(大名を上から見下ろしてやりたいぞ)。
あっちにゃ雲、あっちにゃ山と、興味深く眺めていた峰も、今となっちゃあっしらの布団代わりさ。
箱根の関所と新井の関所が無けりゃぁ、(女性を)連れて行くのに、京都まで。
尾上神社の高砂の松、若一王子神社の千歳の松は千年立っても変わらない深緑を湛えている。

■ 解説

箱根八里」は東海道小田原宿から三島宿までの距離が約八里であったことから、箱根路のことを、「番所」は関所、「矢倉沢」は矢倉沢関所、「三島」は三島宿、「小田原」は小田原宿、「間の関所」はその中間にあった箱根関、「新井」は新井関所、「上方」は関東から見た場合、関西(京都、大阪)を、「尾上」は尾上神社で高砂の松(相生の松)が有名、「千歳の松」は明治時代に台風によって倒されるまで存在した若一王子神社の境内に植えられた千歳の松、といった意味になります。

ちなみになぜ女性を連れていくのかですが、これは参勤交代と関所の役割に関する話になります。
参勤交代は江戸に藩主の正室と世継ぎを人質として常駐させておくことが義務付けられており、その関係から関所では入鉄炮出女(いりでっぽうでおんな)、つまり江戸に入る鉄砲と江戸から出る女性が特に厳しく取り締まられていました。
女性には特に女手形と呼ばれる身体的特徴の書かれた特別な手形が発行されており、手続きも大変面倒なものでした。

■ この詩が詠まれた背景

この唄は馬追いが馬をひきながら唄う馬子唄の一種です。
ちなみに、牛を追う際に唄われる歌は牛追い唄と呼ばれます。
軍事的な理由から大井川には橋がかけられず、水かさが増すと何日も足止めを食らうことから唄われたようです。

■ 豆知識

神奈川県に伝わる民謡で、『箱根八里は 馬でも越すが 越すに越されぬ 大井川』の部分は、神奈川県箱根町元箱根に「箱根馬子唄の碑」という名で石碑が建てられています。

■ 関連地図


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