いろはにほへと(よみ人しらず)

今様 に関する記事

いろはにほへど ちりぬるを
わかよたれぞ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて
あさきゆめみし ゑひもせす よみ人しらず

■ 訳

(どんなに)華やかで美しいものでも(いつか必ず)滅びてしまう。
私も誰でも(すべてのものは)、永遠に存在し続けることはできない。
森羅万象の全てが辿り着く先の彼岸を、今日越えて、(私はもう)儚い夢を見ることも、惑うこともない。

■ 解説

「いろ(色)」は華やかさ、「にほへと(匂へど)」は美しく輝いていても、「ちりぬる(散りぬる)」は散ってしまう、「を」はけれども、「わかよ(我が世)」は自分の人生、「たれぞ」は誰でも、「つねならむ(常ならむ)」は不変ではない、「うゐ(有為)」は森羅万象、「おくやま(奥山)」は人里離れた深い山の意味(今回は彼岸と訳しました)、「けふこえて(今日越えて)」は今日(山を)越えて、「あさきゆめ(浅き夢)」は儚い夢、「見じ」は見ることもないだろう(打消推量)、「ゑひもせす(酔ひもせず)」は惑うこともない、といった意味になります。
訳し方は人それぞれ変わると思いますが、私は「けふこえて」から亡くなった後の様子を想定してみました。

■ この詩が詠まれた背景

この詩はいろは歌で、”ん”を除くすべての仮名を重複させずに使って作られています。
内容に仏教的な要素が含まれており、かつ秀逸なことから、弘法大師が作られたのではとも言われてきましたが、今様形式であるこの詩が弘法大師のいた頃に存在していなかったこともあり、現在では否定されています。

■ 豆知識

作者は不明で、成立した年代も不詳ですが、10世紀末〜11世紀中には成立していたようです。
真言宗の僧である覚鑁は、いろは歌を7+5音ずつに切り分けてみた場合、『涅槃経』の中の無常偈(「諸行無常」、「是生滅法」、「生滅滅已」、「寂滅為楽」)の意味があり、その意訳だとしています。

いろは歌の解釈は現在でも様々なものがありますが、一般的な例としてウィキペディアのものを挙げてみると、
「匂いたつような色の花も散ってしまう。この世で誰が不変でいられよう。いま現世を超越し、はかない夢をみたり、酔いにふけったりすまい」
とあります。

いろは歌が記されたもっとも古い文献である、「金光明最勝王経音義」では、いろは歌は7文字で区切られており、その場合、最後の7文字目をつなげることで「とかなくてしす(咎無くて死す)」、5文字目をつなげることで「ほおつのこめ(大津の小女)」と読めることから、暗号が隠されているのではという話が昔から広く知られていました。
仮名手本忠臣蔵」では赤穂浪士四十七士をいろは47文字に当てはめていますが、それはこの噂を利用したものです。

今様形式なので、同じく今様形式で書かれた歌である「蛍の光」の音楽に合わせて歌うことができます。
覚えにくい場合、試してみるといいかもしれません。
(ほかに有名な曲として滝川廉太郎の荒城の月のメロディにも合わせられるかと思います。)

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