足引の(前大納言為兼)

短歌 に関する記事

足引の 山の白雪 けぬが上に
春てふ今日は かすみたなびく 前大納言為兼

■ 訳

高い山の雪も消えてしまい上に登っていく。
春という今日は霞が長く広がっているよ。

■ 解説

「足引の」は高い山や峰にかかる枕詞、「けぬ」は消えてしまう、「春てふ」は春という、「たなびく」は薄く横に広がる様子、といった意味になります。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は風雅和歌集 第一巻(春歌 第1首目)に収録されています。
題に「春たつ心をよめる」と書かれていることから、立春の趣を詠んだ詩です。

■ 豆知識

作者は京極為兼(きょうごくためかね)で、鎌倉時代後期の歌人です。
京極派の創始者で、玉葉和歌集の撰集を一人で行いました。

為兼が編纂した玉葉和歌集は、従来の美しい情景を美しい言葉で綴った勅撰和歌集と大きく異なり、自由で斬新な詩やこれまで埋もれていた傑作の発掘などが行われました。
ですがその斬新さゆえに、特に当時歌壇の中心であった二条派からは強い反対意見がでており、結果、玉葉和歌集だけでなく、京極派が編纂した風雅和歌集まで、明治時代に入るまで邪道の烙印を押されてしまいました。

現在では玉葉和歌集、風雅和歌集の両勅撰和歌集はその自由で自然体な詩が共感を呼び復権しており、活発な研究が続いています。

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