よつのへみ(よみ人しらず)

仏足石歌体 に関する記事

よつのへみ いつつのものの
あつまれる きたなきみをば
いとひすつべし はなれすつべし よみ人しらず

■ 訳

四蛇、五蘊が集まって出来たこの汚れた身なんて、厭い出家してしまおう。別かれ出家してしまおう。

■ 解説

「よつのへみ」は四蛇(世界を構成するとする四つの要素(土、水、火、風)を毒蛇に例えた言葉)、「いつつのもの」は五蘊(人を構成するとする五つの要素(肉体、感受、表象、意志、認識)を鬼に例えた言葉)、「いとひ」は厭う(出家するの意味もあり)、「すつべし」は捨ててしまう(出家するの意味あり)、といった意味になります。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は薬師寺仏足跡歌碑に刻まれた21首の詩の第十九首目です。

十九首目では十八首目と同様、内容的には布教におけるプロパガンダのように見受けられます。

■ 豆知識

四つの蛇、五つの物(物の怪の意)についてですが、涅槃経には「地水火風は四大蛇の如く、五蘊は旃陀羅の如し」とあります。
旃陀羅は中世における被差別民を指す言葉で、インドにおけるチャンダーラを指します。
チャンダーラは存在自体が汚れていると考えられており、不可触民として接触することも忌避されていたようです。
なお、インドにおいて一部の先住民を指す言葉が賤民を指す言葉になったとされており、元々は征服者による都合で設けられた、士農工商のような政治的なはけ口だったのかもしれません。

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