■ 解説
「けふよりは」は今日からは、「たつ夏衣」は(習慣を)絶つ、つまり夏服に着替える(夏衣は単衣で薄地であることから「うすし」や「ひとへ」、「き(る)」などに掛る枕詞です)、「薄くとも」は(生地が)薄くても、「あつし」は(気温が高く)暑いことと生地の厚みを掛けた言葉、「のみ」はだけ、ばかり、「思ひ渡らむ」はずっと思い続けている、をそれぞれ意味しています。
■ この詩が詠まれた背景
この詩は詞花和歌集 第二巻(夏)に収録されています。
題に「卯月の一日によめる」((旧暦の)4月1日に詠んだ)と書かれています。
■ 豆知識
作者は増基(ぞうき)で中古三十六歌仙の一人です。
上覚が著した和歌色葉(わかいろは)には宇多天皇の時代に同名の人物がいたとの記載があるため、後撰和歌集や大和物語に登場する人物とは別人とする説が優勢ですが、いつの時代の人物なのか、正確なことはわかっていません。
増基法師集という自撰家集があり、これには和歌だけでなく熊野、遠江への旅日記も記されています。
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