■ 解説
「剃捨て(そりすてて)」は髪を剃って(頭を丸めて)、「黒髪山(くろかみやま)」は現在の栃木県日光市にある男体山のこと、「衣更(ころもがへ)」は衣服を着替えることをそれぞれ意味します。
なお、この詩の季語は「衣更」で夏です。
■ この詩が詠まれた背景
この詩はおくのほそ道 (4首目)に収録されています。
この句の前に「黒髪山は霞かゝりて、雪いまだ白し。」(黒髪山は霧がかかっており、(山頂では)雪が今でも白く残っている。)と書かれています。
ちなみに、この詩は旧暦の4月1日に掲載されており、江戸時代における衣替えの時期です。
■ 豆知識
作者は曽良で、松尾芭蕉の弟子として知られています。
この俳句は前回の旅の続きです。
この句の後に、「曾良は河合氏にして、 惣五郎と云へり芭蕉の下葉に軒をならべて予が薪水の労をたすく。このたび松しま象潟の眺共にせん事を悦び、且は羈旅の難をいたはらんと旅立暁髪を剃て墨染にさまをかえ惣五を改て宗悟とす。仍て黒髪山の句有。「衣更」の二字力ありてきこゆ。」(曾良は河合氏の人で、名を惣五郎という。芭蕉庵のそばに軒を並べて、私に骨身を惜しまず働いて(薪水の労)くれている。今回、松島、象潟を共に見に行こうと(誘ったことを)喜び、一方では旅の苦労を労おうと、旅立ちの朝、髪を剃って僧のように姿を変え、惣五という名を改めて宗悟とした。それゆえ黒髪山の句を入れた。「衣更」の2文字には(旅に掛ける意気込みを感じて)力強くあるよう聞こえる。)とあります。
ちなみに、坊主のくだりは次に芭蕉が詠む歌に登場します。
■ 関連地図
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