いかなりし(よみ人しらず)

短歌 に関する記事

いかなりし 昔の罪と 思ふにも
此世にいとゞ 物ぞかなしき よみ人しらず

■ 訳

昔一体どんな罪を犯してしまったのだろうか。
この世がますます悔しくてしょうがないよ。

■ 解説

「いかなりし」はどういうことだ、「いとゞ」はますます、いっそう、「かなしき」は悲しい、くやしい、をそれぞれ意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は平安時代後期に書かれた「とりかへばや物語」の中で詠まれた詩です。
この詩が詠まれるまでの流れをざっくり説明すると、権大納言で大将を兼任している人(関白左大臣)がおり、関白左大臣には長男たる若君、その妹たる姫君がおりましたが、若君は内向的で雛遊びや貝合わせといった女性の遊びばかり、姫君は活発で外で童達と弓や蹴鞠をして遊んだり、客人の前で漢詩や和歌を諳んじて見せたりしていました。
客人は姫君を男性、若君を女性と思い込んでおり、関白左大臣も幼い頃はこんなものでいつか治るだろうと思っていたのですが、十余り過ぎても同じままでしたので、だんだん不安になってきました。
ある日、若君の元に関白左大臣が行ってみると、かぐや姫もこれほどまで美しくはなかったであろうというような姿の若君がいました。
関白左大臣はその姿を見て、涙が出てきました。
これはもう、若君は尼にでもするしかないと思った関白左大臣が詠んだ詩がこれです。

■ 豆知識

この詩はとりかへばや物語の中に書かれた詩ですが、とりかへばや物語自体の作者も不明です。
「とりかへばや」は「とりかえたいなあ」という意味です。

無名草子の記述から、少なくとも現在残っている「とりかへばや物語」と、散逸して断片しか残っていない古い「とりかへばや物語」の2種類があることが分かっており、古い物語の方は非現実的すぎて評価が低かったようです。

雌雄の交尾器が逆になったトリカヘチャタテという昆虫がいるのですが、その名はこの物語のタイトルから取られたものです。

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