君が代も(中皇命)

短歌 に関する記事

君が代も 我が代も知るや 岩代の
岡の草根を いざ結びてな 中皇命

■ 訳

(神々に祈りを捧げることで)あなたの命も私の命もお守りくださるでしょうか。
岩代の丘に生える草や根を結び、さあ、幸運を祈りましょう。

■ 解説

「君が代」は貴方の人生、「わが世」は私(中皇命)の人生、「知る」は世話をする、面倒を見る、「岩代の岡」は和歌山県日高郡みなべ町にある丘、「いざ」はさあ、「結び」は草結びの風習から幸運を祈ること(産霊)、をそれぞれ意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は万葉集 第一巻 (雑歌 10首目)に収録されています。
「中皇命徃于紀温泉之時御歌」(中皇命が紀の温泉に御幸された時の歌)と書かれており、前回、斉明天皇が御幸された際に同行して詠んだものと思われます。

■ 豆知識

作者は中皇命で、時期的な考察から間人皇女(斉明天皇の一つ前の天皇である孝徳天皇の皇后)とされています。
天智天皇や天武天皇とは兄弟(同母)で、天智天皇から見れば妹、天武天皇から見れば姉ということになります。

この詩の中にある「結び」ですが、元々は神道における「むすひ」の概念と思われます。
「むすひ」は「産霊」と書き、神霊を生み出す霊的な力とされています。

この詩の最大の焦点は「君が代」の君です。
「君」は天皇や主人、もしくは男性を指す際に使われる言葉で、草結びしているのは幸運を祈るためなので、祈らなければならない事情があるということになります。
作者が間人皇女であるとされることから、一般的に「君」は中大兄皇子とされています。
この頃起こった大きな事件と言えば、有間皇子の謀反未遂ですが、孝徳天皇と斉明天皇の娘である間人皇女や中大兄皇子が、孝徳天皇と小足媛の子女たる有間皇子をかなり前から危険視していた可能性は十分考えられます。
なお、この行幸の間に有間皇子は捕えられて絞首刑に処せられています。

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