我が欲りし(中皇命)

短歌 に関する記事

我が欲りし 野島は見せつ 底深き
阿胡根の浦の 玉ぞ拾はぬ 中皇命

■ 訳

私が(見たいと)願っていた野島は見ることができました。
深い(水)底の阿胡根の浦では、(美しい)真珠をきっと得られるでしょう。

■ 解説

「欲りし(ほりし)」は願い望む、「見せつ」は確かに見ることができた(確述)、「底深き(そこふかき)」は底が深い、「阿胡根の浦」は地名(現在も場所は不明です)、「玉」は美しいもの、宝玉(島、浦、玉からおそらく真珠)、「拾はぬ」はきっと拾う(得る)だろう(推量)、をそれぞれ意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は万葉集 第一巻 (雑歌 12首目)に収録されています。
この詩も前回同様、斉明天皇が御幸された際に同行して詠んだものと思われます。

■ 豆知識

作者は中皇命で、間人皇女とされています。
天智天皇や天武天皇とは兄弟で、前回の状況から「我が背子」は中大兄皇子を指すものと考えらます。

異伝として「野島」を「子島」、「見せつ」を「見し」と読むとも記されています。

「阿胡根」ですが、「阿胡」の「根」と読み、持統天皇の阿胡行宮(あごのかりみや)の周辺を指しているのではないか、という有力な説があります。
阿胡行宮も場所が特定できているわけではありませんが、候補として志摩国国府(志摩市阿児町国府)、鳥羽湾(鳥羽市小浜海岸)があり、いずれかであった可能性があります。

■ 関連地図

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