三千世界の(高杉晋作)

都々逸 に関する記事

三千世界の 鴉を殺し
主と朝寝が してみたい 高杉晋作

■ 訳

全ての世界のカラスを殺して、貴女と遅くまで寝ていたい。

■ 解説

「三千世界」は仏教用語、三千大千世界の略称ですべての宇宙、すべての世界、「主」は同席していた遊女、「朝寝(あさい)」は朝遅くまで寝ること、をそれぞれ意味します。
「鴉」の部分ですが、いくつか説があり、後述の落語でも扱われている「起請文(きしょうもん)」を指している説、単に朝早くから鳴いているカラスを指している説、カラス=不吉の象徴から不安要素(幕府軍など)を指す説、など様々です。
今回は単純に「カラス」として訳しています。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は高杉晋作、もしくは木戸孝允(桂小五郎)のどちらかが品川遊郭、土蔵相模で詠んだと伝えられています。
(ここでは広く知られている高杉作として掲載しています。)

この詩を元にした三枚起請という落語があります。(落ちがこの都都逸から取られています。)
この落語に登場する起請(文)は熊野牛王符(くまのごおうふ)を指し、起請文に書いた約束を破ると熊野の神使であるカラスが三羽死に、破った当人は地獄に落ちると言い伝えられています。
起請文への宣誓は平安時代末期から行われており、法的にも拘束力のある宣誓文でしたが、江戸時代に入ってからは形骸化し、男女間の愛情が変わらないことを誓うために使われるようになり、さらには遊女が客に誠意を見せる手段として用いられたようです。
遊女の中には客に媚を売るため起請文を客に乱用するケースもあったようで、それが落語、三枚起請の発端になっています。

■ 豆知識

高杉晋作(たかすぎしんさく)は長州藩士で攘夷志士として奇兵隊の創設を行ったことで知られています。
ちなみに坂本龍馬が所持していた拳銃は高杉晋作が贈ったものです。

高杉晋作は肺結核に罹り、わずか27歳でこの世を去っています。
高杉晋作には一人息子、高杉東一がおり、その子孫は今もご健在で、2013年には直系の子孫(玄孫)にあたる高杉力さんが高杉晋作の遺品を市に寄贈したことがニュースになりました。

都都逸とは「七」「七」「七」「五」調で書かれた詩で、基本的に音楽(当時は三味線)に合わせて詠まれる詩です。
口語で書かれており、江戸末期の寄席芸人、初代都々逸坊扇歌によって生み出されました。

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