目には青葉(山口素堂)

俳句 に関する記事

目には青葉 山時鳥 初松魚 山口素堂

■ 訳

目には青々と茂る景色が映る。
山からはホトトギスの声が聞こえる。
そして、初ガツオの美味しい季節だ。

■ 解説

「青葉(あおば)」は青々と茂る葉、「山時鳥(やまほととぎす)」はホトトギス、「初松魚(はつがつお)」は上りガツオとも呼ばれ、4月から5月頃捕られるカツオ、をそれぞれ意味します。
季語は「青葉」、「時鳥」、「松魚」で夏(初夏)です。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は延宝六年(1678年)に刊行された江戸新道(えどしんみち)に来雪という俳号で収録されています。
季語が三つも使われている季重なりの句ですが、それぞれが視覚、聴覚、味覚を指すことで一体感のある、巧みな表現となっています。

■ 豆知識

作者は山口素堂です。
多数の俳号を使用しており、素仙堂、来雪、松子、蓮池翁などがあります。

松尾芭蕉とは住居も近く、友人として親交があったようです。
延宝六年三月(1678年4月21日〜5月20日)に刊行された江戸三吟には芭蕉と共に詠んだ句が載せられています。

この句で詠まれている初鰹ですが、江戸時代、初物を食べれば長生きできるという俗信があり、特に初鰹については、女房を質に入れても食べておきたいと言われるほどのものであったそうです。
ちなみにお値段は1匹で2両以上したようです。
江戸初期の相場では、慶長小判1両を寛永通宝四貫文(4000枚)として計算した場合、日当300文とすると、1か月間休まず働いてようやく1匹買えるか買えないかぐらいの値段となります。

コメント

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このサイトがあることを初めて知りました。ネットの世界は限りなく
広く、山口 素堂 さんの 目には青葉・・・・・。を正しく知りたい
がきっかけで色々な俳句、和歌、短歌 等を教わる大切なサイトです。
これからずっとお世話になるとありがたく存じます。
どうぞよろしくお願いいたします。
Posted by 植田 貞之 at 2021年05月12日 17:19
植田様、初めまして。
お褒めの言葉を頂けて、本当に嬉しいです。

私は基本的に無精者でして、誤った情報がそのまま載っている場合も多々あるかと思いますので、鵜呑みは厳禁でお願いします。

ところでこの詩には「鎌倉一見の頃」という前書が書かれており、これは徒然草第119段の「鎌倉の海に、鰹と言ふ魚は、かの境ひには、さうなきものにて、この比もてなすものなり。(鎌倉の海で捕れるカツオという魚は、そのあたりでは比べるもののない素晴らしいものとして最近珍重されているものです。)」を踏まえた上で詠まれたもののようです。

また、この詩以外にも「夜鰹や またしと思へば 蓼の露」(夜、いつまで待っても出てこない鰹、もう待つまいと思ったが、蓼の夜露が食欲を刺激する。)という詩も詠んでおり、かなりの鰹好きだったのかもしれません。
(蓼は夏の季語で、刺身のつまとして使われます。)
Posted by waka at 2021年05月12日 20:00

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