■ 解説
「今朝かふる」は今朝着る、「蝉の羽衣」は蝉の羽のように薄い生地でできた服(夏服、単衣の事)、「袂」は和服の袖付けから下の袋状の部分、「夏は たつ」は立夏と、先の「袂」から袂を断つ、つまり関係を断つ(この場合、春との決別)、をそれぞれ意味します。
■ この詩が詠まれた背景
この詩は千載和歌集 第三巻 (夏歌)に収録されています。
千載和歌集の題に「堀川院の御時百首の歌奉りける時更衣のこゝろをよみ侍りける」(堀河天皇が治められていたとき、百首歌を献詠した際、衣替えの趣を詠んだ)とあり、康和4(1102年)〜5年に行われた堀河院百首の際に詠まれた詩です。
■ 豆知識
作者は藤原基俊(ふじわらのもととし)で、中古六歌仙の一人です。
小倉百人一首では75首目「契りおきし させもが露を 命にて…」で選歌されています。
千載和歌集の編者である藤原俊成(ふじわらのとしなり)は基俊の弟子です。
俊成の詠んだ詩も小倉百人一首 83首目に選歌されています。
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