夏山に(紀秋岑)

短歌 に関する記事

夏山に こひしき人や いりにけむ
声ふりたてて なく郭公 紀秋岑

■ 訳

木々が青々と茂ったあの夏の山には、恋しい人でもやってきたのだろう。
ホトトギスが声を振り絞って鳴いている。

■ 解説

「夏山」は夏の木々が青々と茂った山、「いりにけむ」は(山に)入ってきたのだろう、「郭公(ほととぎす)」はホトトギス、をそれぞれ意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は古今和歌集 第三巻(夏歌 158首目)に収録されています。
題に「寛平御時きさいの宮の哥合のうた」(寛平御時后宮歌合で詠まれた歌)とあります。

■ 豆知識

作者は紀秋岑(きのあきみね:紀秋峰とも書かれます)です。
父は紀善峯(きのよしみね)で、紀貫之と同様に武内宿禰の子孫に当たります。

異母兄弟である紀夏井(きのなつい)は清貧な性格で、国司として任地に赴くたびに住民から絶大な信頼を寄せられていました。
しかし、異母弟である紀豊城(きのとよき)が応天門の変で首謀者である伴善男(とものよしお)の従僕として逮捕されると、それに連座する形で貞観8年(866年)、土佐国に流罪となります。
この事件は紀家没落を決定的なものにし、以降、紀家は文人・歌人を排出するに留まっています。
なお、秋岑は寛平年間(889年-898年)の歌合に参加していること(本和歌)から、罪に問われなかったか、許されていたようです。

コメント

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。


コメントを書く

お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: