■ 解説
「打ち麻を(うちそを)」は麻績(をみ)に掛る枕詞(打ち麻:打って柔らかくした麻)、「麻続の王(おみのおう)」は麻績王(おみおう)、「海人なれや(あまなれや)」は海人なのだろうか(”なれや”は疑問)、「伊良虞の島(いらごのしま)」は現在の伊勢湾にある伊良湖岬沖にある島(正確なことは分かっていませんが、一説に神島とあります)、「玉藻(たまも)」は藻の美称、「刈ります」は刈っていらっしゃる(尊敬語)、をそれぞれ意味します。
■ この詩が詠まれた背景
この詩は万葉集 第一巻(雜歌 23首目)に収録されています。
題詞に「麻續王流於伊勢國伊良虞嶋之時人哀傷作歌」(麻續王が伊勢国伊良虞の島に流刑に遭った際にその時の人がその様子を悲しんで作った歌)とあります。
左注として「右案日本紀曰 天皇四年乙亥夏四月戊戌朔乙卯三位麻續王有罪流于因幡 一子流伊豆嶋 一子流血鹿嶋也 是云配于伊勢國伊良虞嶋者 若疑後人縁歌辞而誤記乎」(この詩の題詞は日本書紀に「675年4月18日に三位である麻績王が有罪となって因幡に流罪となる。子の一人を伊豆諸島に、子の一人を血鹿の島(値嘉島:長崎県の五島列島)に流した」と書かれていることから、ここ(万葉集)に伊勢国の伊良虞の島に流すと書かれたのは、ひょっとして後の人がこの歌を元にして題を記した際に誤って書いたのではないか。)とあり、この万葉集の写本を書かれた方は、実際に流されたのは日本書紀に記された因幡国(現在の鳥取県東部)なのではないかと考えたようです。
■ 豆知識
時人(じじん)とありますが、これは「その時代の人」を指す言葉ですので、作者は不明です。
この詩には麻続王が詠んだ返歌があり、24首目に掲載されています。
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