まくずはふ(太宰大貳長實)

短歌 に関する記事

まくずはふ あだの大野の 白露を
吹きなはらひそ 秋の初風 太宰大貳長實

■ 訳

阿太の大野に茂る葛の葉を飾る白露を、吹き払わないでくれよ、秋の初風よ。

■ 解説

「まくず」は葛、「はふ」は(つる草が)地面やものにまとわりついて伸びる様子、「あだの大野(阿太の大野)」は現在の奈良県五條市北東部の吉野川沿岸(歌枕)、「白露」は白く光って見える露、「吹きなはらひそ」は吹き払わないでくれ(”そ”は禁止)、「初風」はその季節に初めて吹く風、をそれぞれ意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は金葉和歌集 第三巻(秋歌)に収録されています。
題に「野草帶露といへる事をよめる」(露を帯びた野原ということを詠んだ)とあります。

■ 豆知識

作者は藤原長実(ふじわらのながざね)で藤原顕季(ふじわらのあきすえ)の子です。
長実の娘は鳥羽天皇の皇后、近衛天皇の母で玉藻前の伝説のモデルとなった藤原得子(ふじわらのなりこ)です。

権中納言でしたが、その政治手腕は酷評されており、藤原伊通(ふじわらのこれみち)が抗議の意味を込めて退職したり、長実が亡くなった長承2年8月19日に書かれた中右記には「未曾有無才之人昇納言(才能の無い人が納言になったのは未だかつて無い)」と書かれています。

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