■ 解説
語句に説明は必要ないと思いますが、この詩は狂歌で、表向きの文面だけでなく社会風刺が含まれています。
■ この詩が詠まれた背景
この詩は松平定信(まつだいらさだのぶ)の行った寛政の改革を皮肉ったものです。
田沼意次は商業を重視した政策を行いましたが、結果、農村から人がいなくなり、天明の大飢饉発生の際、江戸や大坂といった大都市に流入した農民による打ちこわしが発生します。
天明の大飢饉の際、白河藩藩主であった定信はいち早くその危機に対応し、結果白河藩からは一人の餓死者も出すことなくその危機を乗り越えたそうで、その手腕を買われて、後に老中に取り立てられることになります。
定信は寛政の改革を行い、今後の大飢饉に備えるための備蓄の推奨や、暴動などの混乱や農地の荒廃を事前に防ぐための人返しなど、非常に真面目な政策を行いましたが、武士や農民にまで緊縮を求めたり、武士への文武奨励、特に寛政異学の禁と呼ばれる朱子学を中心とし、蘭学を禁じるといった言論統制を行ったため、多くの不評を招き、定信はわずか6年で失脚することになります。
■ 豆知識
作者は不明です。
寛政の改革について他にも狂歌が詠まれています。
「白河の 清きに魚の すみかねて もとの濁りの 田沼こひしき」
(潔癖すぎてこれじゃ魚も住めない。多少濁っていても田や沼の水が恋しいよ。(白河藩藩主、松平定信は潔癖すぎる。ちょっとぐらい不正があっても田沼意次の頃が恋しい。))
この詩は大田南畝(おおたなんぽ)が詠んだ狂歌ですが、今回紹介した「世の中に…」も南畝作ではないかと当時名指しされており、処士横議の禁もあって幕府から目を付けられていたようです。
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