藤衣(橘元任)

短歌 に関する記事

藤衣 いみもやすると 棚機に
かさぬにつけて ぬるゝ袖かな 橘元任

■ 訳

喪服を着て服喪していると、(今日が七夕であることを気づかされた。)
まるで(年に一度しか会えない恋人と、二度と会うことができない父の姿を)七夕に重ねて、袖を(涙で)濡らしてしまう。

■ 解説

「藤衣(ふぢごろも)」は喪服、「いみもやすると(忌みも休ると)」は服喪し滞在していると、「かさぬ(重ぬ)」は重ねる、をそれぞれ意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は金葉和歌集 第三巻(秋歌)に収録されています。
題に「七月七日父のぶくにて侍りける年よめる」(7月7日、父の仏前(仏供)に参った年に詠んだ)とあります。

■ 豆知識

作者は橘元任(たちばなのもととう)で能因法師の息子です。
つまり、この和歌は能因法師の仏前で詠まれたものとなります。

「藤衣」は喪服を指しますが、これは喪服が元々は藤の蔓で編んだ目の粗い服だったためです。
当初の服の色は素材の色そのものだったようですが、平安時代に入り貴族社会においては灰色に染色された服が用いられるようになり、さらに悲しみの度合いによってより色が濃くなるといったルールが制定され、黒に近い色が着られるようになったようです。
ちなみに、喪服の色は白装束という言葉があるように、一般的には白が着られていましたが、明治時代に入って欧米の文化が入ってきたことで黒が着られるようになり、昭和初期には庶民でも汚れの目立たない黒が着られるようになりました。

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