■ 解説
「棚機(たなばた)」は織姫、「かせる衣(貸せるころも)」は貸した着物、「露けさ(つゆけさ)」は(露に濡れた)しめっぽさ、「あかぬけしきを(飽かぬ景色を)」は名残惜しい様子(”あかぬ”は満ち足りないの意味も)、をそれぞれ意味します。
「露けさ」は織姫の涙と朝露を掛けたものと思われ、また「空に志る」から夜が明けた(逢瀬の時が終わった)様子が想像できます。
■ この詩が詠まれた背景
この詩は金葉和歌集 第三巻(秋歌)に収録されています。
題に「七夕の心をよめる」とあります。
■ 豆知識
作者は源国信(みなもとのくにざね)で、歌人として源宰相中将家和歌合の主催や堀河百首を編纂しました。
村上源氏の一族で、父は六条右大臣、源顕房(みなもとのあきふさ)で、祖父は土御門右大臣、源師房(みなもとのもろふさ)です。
当時の貴族の職業病なのか、糖尿病(当時は飲水病と呼ばれていました)でわずか43歳で亡くなっています。
糖尿病の原因は糖分の摂取だけではありませんが、平安時代において入手可能な甘い食品には、アマヅラ(甘葛)、蜂蜜、瓜(甜瓜)のような果物、甘酒などがありました。
ちなみに、牛乳から作られた飲むヨーグルトのような飲み物(醍醐)、もしくは甘酒を牛乳で割った飲み物が、醍醐味の語源になったと言われています。
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