■ 解説
「蟋蟀(きりぎりす)」はコオロギ(秋に鳴く虫全般も指します)、「いたくな(甚くな)」は甚だしく、「なきそ」は鳴かないで(泣かないで)ほしい(禁止)、「まされる」は勝っている、をそれぞれ意味します。
■ この詩が詠まれた背景
この詩は古今和歌集 第四巻(秋歌上 196首目)に収録されています。
題に「人のもとにまかれりける夜、きりぎりすのなきけるをききてよめる」(人に招かれた夜、コオロギが鳴いているのを聞いて詠んだ)とあります。
■ 豆知識
作者は藤原忠房(ふじわらのただふさ)で、中古三十六歌仙の1人です。
舞楽家で、胡蝶楽(こちょうらく)[※参考(Youtube)]、武徳楽(ぶとくらく)[※参考(Youtube)]の作曲家として知られています。
舞楽には唐楽(とうがく:唐の音楽に基づいた雅楽)と高麗楽(こまがく:高句麗、百済、新羅、渤海の音楽に基づいた雅楽)の二種類があり、忠房の作曲した胡蝶楽は高麗楽に類します。
なお、唐楽を左方(インド系である林邑楽も左方になります)、高麗楽を右方と呼ぶのですが、これは舞台の左、右にそれぞれ楽器などを配したことや、左大臣、右大臣のように強力な国家であった唐を左に配したことから呼ばれるようになったそうです。
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