浮雲の(後西園寺入道前太政大臣)

短歌 に関する記事

浮雲の 秋より冬に かゝるまで
時雨すさめる とほやまの松 後西園寺入道前太政大臣

■ 訳

雲が秋から冬の空にまで長く架かっているのだなぁ。
時雨が激しい勢いで遠方の山にある松(林)に降りつけているよ。

■ 解説

「浮雲(うきぐも)」は空に浮いている雲(”憂き”と掛けて不安な様子を指す場合があります)、「かゝるまで(架かるまで)」は架かっているのだなぁ(”まで”は強調、感動)、「時雨すさめる(しぐれ荒める)」は激しく時雨が降っている、「とほやま(遠山)」は遠方の山、をそれぞれ意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は風雅和歌集 第八巻(冬歌)に収録されています。
題は「初冬の歌に」とあります。

■ 豆知識

作者は西園寺実兼(さいおんじさねかね)です。
父である西園寺公相(さいおんじきんすけ)と同様に太政大臣でした。
娘である西園寺鏱子(さいおんじしょうし)は伏見天皇の中宮になっています。

実兼は琵琶の名手であり、また歌人としても多くの詩を残しています。
勅撰和歌集には209首もの詩が入集しています。

実兼は京極派の歌人ですが、創始者である京極為兼(きょうごくためかね)のあまりに不遜な態度に怒り失脚させました。
具体的には、為兼は伏見上皇と共に出家したにもかかわらず派手な春日大社詣でを行って歌合や宴を催しており、その行為が怒りを買ったようです。

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