神無月(源師賢朝臣)

短歌 に関する記事

神無月 志ぐるゝまゝに 暗部山
下てるばかり 紅葉志にけり 源師賢朝臣

■ 訳

神無月になり、時雨が降ることで暗部山(の木々)の下は美しく照り返されるぐらい紅葉したのだなぁ。

■ 解説

「神無月(かみなづき)」は(旧暦)10月、「志ぐるゝまゝに(しぐるるままに)」は時雨が降ることによって、「暗部山(くらぶやま)」は鞍馬山の古称(歌枕)、「下てるばかり(した照るばかり)」は(紅葉で木の)下が美しく照り映えるほど、「紅葉志にけり(もみぢしにけり)」は紅葉している、をそれぞれ意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は金葉和歌集 第四巻(冬歌)に収録されています。
題に「承暦二年御前にて殿上のをのこども題を探りて歌つかうまつりけるに時雨をとりて」(承暦二年(1078年)、白河天皇の御前で殿上人たちが題を探して詩を(白河天皇に)詩を詠み申し上げる際に「時雨」(の題)を取って。)とあります。
この歌合は他の金葉和歌集の題から承暦二年四月二十八日に行われた内裏歌合と思われます。

■ 豆知識

作者は源師賢(みなもとのもろかた)で、宇多源氏です。
管楽を家業としており、師賢もまた琴の名手として知られています。
以前紹介した詩として、金葉和歌集に「我のみぞ…」が入集しています。

以前にも書いたことがありますが、暗部山は鞍馬山の隣にある貴船山を指す可能性があります。

この詩は初冬の詩ですが、時雨が降ることで紅葉する様子を詠んだ詩になっています。
「下てる(下照る)」という表現が使われており、時雨が残した水たまりに照り返される紅葉も想像できます。

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