■ 解説
「まさらで(増さらで)」は増えないで、「志ぐれ(しぐれ)」は時雨、「色ぞ 深くなりける」は色合いが濃くなった、をそれぞれ意味します。
■ この詩が詠まれた背景
この詩は金葉和歌集 第四巻(冬歌)に収録されています。
題に「ならにて人々の百首の歌よみけるに時雨をよめる」(奈良で多くの人たちが百首歌を詠んだ際に時雨の題で詠んだ)とあります。
■ 豆知識
作者は永縁(えいえん(”ようえん”とも呼ばれます))で、数々の寺で別当を勤め、保安五年/天治元年(1124年)には興福寺の権僧正になっています。
なお、父は藤原永相(ふじわらのながすけ)、母は大江公資(おおえのきんより)の娘で、俊子内親王家河内(としこないしんのうけのかわち)は妹に当たります。
通称として初音の僧正とも呼ばれるのですが、これは金葉和歌集 第二巻 夏歌に入集している代表歌、「聞く度に めづらしければ 時鳥 いつも初音の 心地こそすれ」から取られたものです。
勅撰和歌集には全部で26首入集しており、特に金葉和歌集には半数に当たる13首が入集しています。
永縁が興福寺花林院で張行した歌合(奈良花林院歌合)の様子を記した書跡である永縁奈良房歌合は重要文化財に指定されており、天理大学附属天理図書館に収められています。
■ 関連地図
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