おとにだに(源定信)

短歌 に関する記事

おとにだに 袂をぬらす 時雨かな
槇の板屋の よるの寐覺に 源定信

■ 訳

雨音を聞くだけでも袂を濡らしてしまいそうな時雨だなぁ。
立派な木で出来た板屋根を(雨音が鳴らす)夜、目覚めると。

■ 解説

「おとにだに(音にだに)」は音だけで(”だに”はでさえ(暗示))、「槇(まき)」は立派な木、良材(”ま”は美称)、「板屋(いたや)」は板でできた屋根、板屋根、「よるの寐覺(夜のねざめ)」は夜に目を覚ます、をそれぞれ意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は金葉和歌集 第四巻(冬歌)に収録されています。
題に「ならにて人々の百首の歌よみけるに時雨をよめる」(奈良で多くの人たちが百首歌を詠んだ際に時雨の題で詠んだ)とあります。

■ 豆知識

作者は源定信(みなもとのさだのぶ)で三条源氏です。
三条天皇の子である敦明親王(あつあきらしんのう)の孫に当たり、父は院中将と呼ばれた源信宗(みなもとののぶむね)です。
勅撰和歌集には4首入集しており、内3首が金葉和歌集に入集しています。

康和4年(1102年)に出家して道舜(どうしゅん)と名乗りました。
従兄弟に当たる天台宗の僧である行尊(ぎょうそん)も歌人として知られており、小倉百人一首 66首目「もろともに…」が選歌されています。

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