閑さや(松尾芭蕉)

俳句 に関する記事

閑さや 岩にしみ入 蝉の声 松尾芭蕉

■ 訳

立石寺の静寂さは、まるでセミの鳴き声でさえ岩に染み入っているかのようだ。

■ 解説

「閑さ(しずかさ)」はひっそりしているようす、を意味します。
季語は「蝉」で夏です。
ちなみにこの俳句の「蝉」はこの句が詠まれた日から、ニイニイゼミだったのだろうと考えられています。

■ この詩が詠まれた背景

この句はおくのほそ道、「立石寺(りっしゃくじ)」の中で芭蕉が詠んだ俳句で、前回の続きです。

おくのほそ道には、
「山形領に立石寺と云山寺あり。
慈覚大師の開基にて、殊清閑の地也。
一見すべきよし、人々のすゝむるに依て、尾花沢よりとつて返し、其間七里ばかり也。
日いまだ暮ず。
梺の坊に宿かり置て、山上の堂にのぼる。
岩に巖を重て山とし、松柏年旧土石老て苔滑に、岩上の院々扉を閉て物の音きこえず。
岸をめぐり、岩を這て仏閣を拝し、佳景寂寞として心すみ行のみおぼゆ。
(本俳句)」

(山形領(現在の山形県山形市)に立石寺という山寺がある。
慈覚大師(円仁)が開山された、実に清らかで静かな場所だ。
一度は目にするように人々から言われるので、尾花沢からその間28kmほど引き返した。
日はまだ落ちていないので、麓の僧房に宿を借り荷物を置いて山の上の御堂に登った。
岩に大きな岩を重ねて山とし、松や柏の年を経た大木、地や石には苔が生え、岩上の観明院、性相院、金乗院などは扉を閉じて音も聞こえない。
崖に沿い、岩を這って仏閣を拝み、静寂の中見える良い景色は、心を澄み渡らせるように感じた。
(本俳句))とあります。

■ 豆知識

作者は松尾芭蕉です。
この詩はおくのほそ道の中でも特に名句として広く知られています。

曾良旅日記によると、この句は5月27日の事で「山寺や 石にしみつく 蝉の聲」と詠んだ句が初版、泊船集の「蝉」の題で載る「さびしさや 岩にしみ込む 蝉の声」が二版、おくのほそ道の「閑さや 岩にしみ入 蝉の声」が三版と推敲されていったようです。

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