鞦韆の(萩原朔太郎)

短歌 に関する記事

鞦韆の さゆらぎ止まぬ 我が庭の
芭蕉卷葉に 細し春雨 萩原朔太郎

■ 訳

庭にあるブランコがかすかに揺れている。
しとしとと降る春雨が、まだ芽の固い芭蕉の新葉をしっとりと濡らせている。

■ 解説

「鞦韆」はブランコ(読みは”ふらここ”、”ぶらここ”、”ぶらんこ”、”しゅうせん”と複数ありますが、どの読みに当たるのかを調べ切ることができませんでした)、「さゆらぎ(さ揺らぎ)」はかすかに揺れる様子、「芭蕉巻葉(ばせうまきは)」は芭蕉の新葉(固く巻いた状態の葉)、をそれぞれ意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は萩原朔太郎の詠んだ短歌です。
題に「明治三十五年」とあり、詩中に「芭蕉卷葉に 細し春雨」とあることから、晩春から初夏、5月頃読まれた詩ではないでしょうか。

■ 豆知識

作者は萩原朔太郎(はぎわらさくたろう)で、大正時代に活躍した詩人です。
数多くの詩を残し、日本近代詩の父と呼ばれています。
朔太郎は詩人としてだけでなく、小説、随筆、詩論集も書いており、またマンドリン奏者としても知られています。

朔太郎は古今和歌集を痛烈に批判したことでも知られています。
歌論「古今集に就いて」の中で「低能幼稚」、「事實上の退歩」、「萬葉集とは、到底同日の比蛟にはならない」などと罵倒しています。
(一方で新古今和歌集については「純粋詩としての新古今集」の中で「新古今集の歌の美しさこそ、東西古今の抒情詩中で、この世のたぐひなきものであらう。」と絶賛しています。)

この詩に登場した「芭蕉」は英語でJapanese Bananaと呼ばれ、結実するとバナナによく似た果実を付けます。
追熟することで美味しく食べられるそうですが、大変手間がかかる上、種が多く非常に食べづらいそうです。
ちなみに松尾芭蕉の俳号である「芭蕉」は、門下生である李下(りか)から芭蕉の株を譲られたことから採用されたそうです。

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