■ 解説
「このめもはるの(木の芽も春の)」は春の木の芽、もしくは木の芽が張る(開花前)、「花なきさとも(花無き里)」は花の咲いていない人里、をそれぞれ意味します。
過去何度か登場しましたが、この詩では雪を花として詠んでおり、また「このめもはるの」の部分は春と張るを掛けることで、花が芽ぐむ様子を掛けています。
■ この詩が詠まれた背景
この詩は古今和歌集 第一巻(春歌上 8首目)に収録されています。
題に「ゆきのふりけるをよめる」(雪が降る様子を詠んだ)とあります。
■ 豆知識
作者は紀貫之(きのつらゆき)で三十六歌仙の一人、土佐日記の作者、古今和歌集の撰者の一人として知られています。
小倉百人一首では35首目、「人はいさ…」が選歌されています。
この詩では春霞が立っている中で雪をまだ咲いていない花に例えており、さらにそれが散る様子を詠んでいることから、花は桜であるように思われます。
桜の開花時期は平安京のあった京都の場合、3月末頃から始まりますので、この詩は3月上旬頃(旧暦では1月中旬以降)に詠まれた詩かもしれません。
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