■ 解説
「あつめて早し」は雨が集まって川の流れが速くなっている様子を意味します。
季語は「五月雨」で夏です。
■ この詩が詠まれた背景
この句はおくのほそ道、「最上川(もがみがわ)」の中で芭蕉が詠んだ俳句で、前回の続きです。
おくのほそ道には、
「最上川のらんと、大石田と云所に日和を待。
爰に古き誹諧の種こぼれて、忘れぬ花のむかしをしたひ、芦角一声の心をやはらげ、此道にさぐりあしゝて、新古ふた道にふみまよふといへども、みちしるべする人しなければとわりなき一巻残しぬ。
このたびの風流爰に至れり。
最上川はみちのくより出て、山形を水上とす。
こてんはやぶさなど云おそろしき難所有。
板敷山の北を流て、果は酒田の海に入。
左右山覆ひ、茂みの中に船を下す。
是に稲つみたるをやいな船といふならし。
白糸の瀧は青葉の隙隙に落て仙人堂岸に臨て立。
水みなぎつて舟あやうし。
(本俳句)」
(最上川で舟下りしようと大石田という場所で晴天を待った。
「ここには昔から俳諧のタネが転がっていて、昔の句を忘れず(花となるまで)大切に育て、(芦笛の音を聞くように)心を落ち着かせてきたのですが、これからは新しい時代に合った句が良いのか、古い句のままが良いのか、と道を探ってはいるものの、先導できる人もいないのです」
と仰るので、仕方がないと(俳諧を)一巻残した。
(おくのほそ道の)旅の風流は(大石田の人と出会うことで)極まることができた。
最上川は陸奥を水源とし、山形を上流とする川だ。
碁点や隼といった恐ろしい難所がある。
板敷山の北を流れて、酒田の海に流れ着く。
左右は山に覆われており、まるで茂みの中を舟で下るようだ。
この舟に稲を積んだものを稲舟と言うらしい。
白糸の滝は青葉の茂る木々の間に落ちており、仙人堂の対岸にある。
水はあふれるほどに満ちていて舟も危険だ。
(本俳句))とあります。
■ 豆知識
作者は松尾芭蕉です。
前回同様、この詩もおくのほそ道の中でも特に名句として広く知られています。
芭蕉は大石田の人と交流することで一巻の連歌を残していますが、この時の参加者は芭蕉、曾良、高野一栄、高桑川水の4人だったそうです。
ちなみにこの時の発句は「さみだれを あつめてすゞし もがみ川」だったそうで、この句が元となって今回紹介した句が生まれたようです。
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