天の戸を(皇太后宮大夫俊成)

短歌 に関する記事

天の戸を あくる氣色も 靜にて
雲ゐよりこそ 春は立ちけれ 皇太后宮大夫俊成

■ 訳

(立春の今日、)夜明けの空は穏やかで、(この景色を見ると)春というのは大空からなってゆくのだなぁ。

■ 解説

「天の戸を あくる(あまのとを開くる)」は夜が明ける(神話的表現として用いられます)、「氣色(けしき)」は様子もしくは景色(”氣色(気色)”は空模様や辺りの様子、兆しなどを指します)、「靜(しずか)」は穏やか、「雲ゐ(くも居)」は天空、もしくは皇居、をそれぞれ意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は新勅撰和歌集 第一巻(春歌上)に収録されています。
題に「立春の歌とてよみ侍りける」(立春の歌として詠んだ)とあります。
皇室と関わりの多い表現が使われていますので、殿上で詠まれた詩かもしれません。

■ 豆知識

作者は藤原俊成(ふじわらのとしなり)で、藤原北家御子左流、千載和歌集の撰者の一人です。
小倉百人一首では83首目、「世の中よ…」が選歌されています。

自身が歌人として優れた業績を残すだけでなく、弟子の寂蓮(じゃくれん)、藤原家隆(ふじわらのいえたか)、息子の藤原定家(ふじわらのさだいえ)は、いずれも歌人として大成しています。
父である藤原俊忠(ふじわらのとしただ)も歌人として知られており、祐子内親王家紀伊との歌のやりとりが知られています。

千載和歌集の撰者として編纂しましたが、後白河院が奏覧された後、俊成の詠んだ詩が少なすぎるとし、自身の詠んだ詩を自ら選歌した後、改訂しています。
ちなみに採用数は源俊頼が52首と最も多く、俊成は36首の詩が載せられています。

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