うぐひすの(大江千里)

短歌 に関する記事

うぐひすの 谷よりいづる こゑなくは
春くることを たれかしらまし 大江千里

■ 訳

もしも谷から聞こえてくるはずのウグイスの鳴き声が無かったなら、春がやってきたということを一体誰が知ることができるだろうか。

■ 解説

「こゑなくは(声無くは)」は(鳴き)声が無かったなら、「たれかしらまし(誰か知らまし)」はもし〜だったなら誰が知ることができるだろうか(反実仮想)、をそれぞれ意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は古今和歌集 第一巻(春歌上 14首目)に収録されています。
題に「寛平御時きさいの宮のうたあはせのうた」(寛平御時后宮歌合で詠まれた詩)とあります。

■ 豆知識

作者は大江千里(おおえのちさと)で中古三十六歌仙の一人です。
小倉百人一首では23首目「月みれば…」が選歌されています。

古文において「たれかしらまし」のような「〜まし」が使われる文法表現を”反実仮想”と言い、これは事実と反対のことを想定することを意味します。
反実仮想の例として、パスカルが書いた「パンセ」に登場する表現、「クレオパトラの鼻。それがもっと短かったら( 低かったなら)、歴史が変わっていた」は広く知られています。

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