昨日まで(後京極攝政前太政大臣)

短歌 に関する記事

昨日まで 霞みし物を 津の國の
難波わたりの 夏のあけぼの 後京極攝政前太政大臣

■ 訳

(つい)先日まで霞んでいて趣があったのに(消えてしまった)。
(もう)夏になった摂津国、難波一帯の曙よ。

■ 解説

「津の國」は摂津国(現在の大阪府)、「難波わたり(なんば辺り)」は難波付近、「あけぼの(曙)」は夜の明け始めの時間帯、をそれぞれ意味します。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は風雅和歌集 第四巻(夏歌)に収録されています。
題に「後鳥羽院よりめされける五十首の歌の中に」(後鳥羽上皇に任じられた50首の歌の中に)とあります。

難波の春霞は能因法師も後拾遺和歌集 第一 春上において、「心あらむ 人にみせばや 津の國の 難波わたりの 春の景色を」と詠んでおり、趣ある景色として知られていました。
この詩はその景色を惜しむ様子を詠んだものです。

■ 豆知識

作者は九条良経(くじょうよしつね)で、新三十六歌仙の一人です。
和歌だけでなく書家としても大変有名で、その力強い書風は後に後京極流と呼ばれるようになりました。
小倉百人一首には91首目、「きりぎりす…」が選歌されています。

良経が主宰した六百番歌合は新古今和歌集編纂において多大な貢献をしました。
また、良経は新古今和歌集の仮名序も書いています。
(ちなみに新古今和歌集の真名序は当代きっての儒者であった藤原親経によって書かれました。)

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