夏きては(前大納言爲家)

短歌 に関する記事

夏きては たゞ一重なる 衣手に
いかでか春を 立ち隔つらむ 前大納言爲家

■ 訳

夏になり、(夏服に衣替えして)一枚になった袖だけで、どうして春(であった頃と夏になった今)を区切ることができるだろうか。

■ 解説

「一重(ひとへ)」は一枚(単衣と掛っています)、「いかでか(如何でか)」はどうして(疑問)、「立ち隔つらむ(たちへだつらむ)」は区別する(”立ち”は接頭語(強調))、をそれぞれ意味します。
旧暦の4月1日は更衣(夏服に着替える日)で立夏が旧暦の3月末から4月上旬に当たる時期ですので、その様子を詠んだものと思われます。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は風雅和歌集 第四巻(夏歌)に収録されています。
題に「寳治の百首の歌の中に、同じ心を」(宝治御百首において同じ題で)とあり、前回の題と同じ、初夏を詠んだ詩です。

■ 豆知識

作者は藤原為家(ふじわらのためいえ)で、藤原定家(ふじわらのさだいえ)の三男です。
蹴鞠がうまく、為家の長男である二条為氏(にじょうためうじ)は鞠道、御子左流を成しました。

伯父であり養父である西園寺公経(さいおんじきんつね)の影響もあり、父を超える権大納言にまで昇り、また歌壇でも活躍しました。
しかし晩年は内妻である阿仏尼(あぶつに)と同棲して出来た息子、冷泉為相(れいぜいためすけ)を溺愛したことが原因で、為家の死後、相続問題に発展しています。

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