■ 解説
「かほらす」は霧などが立ち込める様子、「南谷(みなみたに)」は現在の山形県鶴岡市にある羽黒山にかつてあった南谷別院、をそれぞれ意味します。
この俳句に季語はありませんが、「かほらす」=「薫風」「風薫る」として見れば夏の季語となります。
■ この詩が詠まれた背景
この句はおくのほそ道、「出羽三山(でわさんざん)」の中で芭蕉が詠んだ俳句で、前回の続きです。
おくのほそ道には、
「六月三日、羽黒山に登る。
図司左吉と云者を尋て、別当代会覚阿闍利に謁す。
南谷の別院に舎して憐愍の情こまやかにあるじせらる。
四日、本坊にをゐて誹諧興行。
(本俳句)」
(六月三日(1689年7月19日)、羽黒山に登る。
図司左吉という方を訪ね、(彼に取り次いでいただき)、別当代(代表者)である会覚阿闍利にお会いできた。
南谷の別院を宿としてお貸し戴くなど、細やかな慈悲の気持ちで(おもてなし戴いた)。
四日、本坊にて誹諧興行(を行う。)
(本俳句))とあります。
■ 豆知識
作者は松尾芭蕉です。
南谷別院は現在は既に存在しませんが、南谷別院跡として史跡が残されています。
「俳諧興行」とありますが、この時行われたのは八吟歌仙で今回紹介した俳句が発句であり、芭蕉、曽良、会覚、呂丸、釣雪、円入、珠妙、梨水の八人で行われたそうです。
■ 関連地図
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