ちりはてゝ(前大僧正慈円)

短歌 に関する記事

ちりはてゝ 花のかげなき このもとに
たつことやすき なつごろもかな 前大僧正慈円

■ 訳

(桜の)花はすっかり散ってしまって(春の頃の)面影は無くなってしまったが、夏になっても木の葉をまとって(私を)涼ませてくれる木陰だなあ。

■ 解説

「ちりはてゝ(散り果てて)」は(完全に)散ってしまって、「花のかげ(はなの影)」は(桜の)花の姿、「このもと(木の元)」は木の根元、「なつごろも(夏衣)」は夏服(ここでは木の葉)、をそれぞれ意味します。
この詩は桜の木が花から木の葉に代わる様子を衣替えとして見立てた詩です。

■ この詩が詠まれた背景

この詩は新古今和歌集 第三巻(夏歌 177首目)に収録されています。
題に「更衣をよみ侍ける」(衣替えを詠んだ)とあります。

■ 豆知識

作者は慈円(じえん)で、天台宗の僧です。
小倉百人一首では95首目、「おほけなく…」が選歌されています。

慈円は西行と交流があったことが知られています。
勅撰和歌集の題にも歌を送り返歌をもらった記録が記されています。
説話ですが、西行に和歌を極めるよう言いつけられて慈円が励んだ話も載せられています。

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